死後の世界 (9)「生きがい」 が見い出せないという苦悩

暇

 

三郎さんは死後の世界に入ってからさまざまな経験をしてきました。この世界ではその経験の一つ一つが霊的に成長するのか否かの要因になっています。彼が他界してこの世界に来た当初はとても素晴らしい世界に思えたのですが、今は生きがいが見いだせず悩みだらけの三郎さんなのでした。

なおここでの 死後の世界 の見解については水波霊魂学に基づいており、水波先生の著書「死後の世界で恋をして–愛って?」で主人公が経験したことを参考にしています。

 

生きがい がないという苦悩

三郎さんは生前のことを考えていました。彼は小学生のころから勉強やスポーツで常に誰かと競争してしました。受験の時も会社員になってからもそうでした。競争の中で彼は大学を卒業し、会社員として頑張って働いて、結婚相手を見つけましたが、結婚間近で他界してしまいました。彼の周囲の人や婚約者は彼を喪ったことをとても悲しみました。
「こんなに若いのに」「前途ある若者だったのに」「これから幸せになれたのに」

しかし、三郎さんは存在します。
この世の人達には見えませんが、彼は死後の世界で生活していました。
最初はこんなに素晴らしい世界があったのかと感動しました。何でも実現する世界、働かなくてもいい世界、競争しなくていい世界・・・。

夢のような世界でした。最初のうちは。
でもこの世界の現実を知れば知るほど、三郎さんは思います。
「物質の世界は良かったなあ」

物質の世界には「 生きがい 」がありました。仕事が生きがいの人もいましたし、お金が生きがいの人もいましたし、家族が生きがいの人もいました。人々は何かしらの生きがいを持って生活していました。この世では生きがいが見つけられない人が悩んでいたのです。

しかし、死後の世界は何をしても良い世界ですので、生きがいを探すのが難しかったのでした。生きがいや生きる目的が見つけられないと、何をすれば良いのか分かりませんし、そんな自分に何の価値があるのかと思い悩むことになります。悩みが深くなりますと、心理を病んでしまうこともあるのですが、何の制約も遮るものもない世界での苦悩はこの世での苦悩とは比べ物にならないくらい深刻なものとなります。何しろ時間の概念がありませんし、意見してくれる人もいませんので、苦悩の心情で満たされてしまいますと、終わりがありません。何年でも何十年でもずっと苦悩したままです。

三郎さんは危うく釜茹でにされるところでしたが、今では理解できるのです。
物質の世界のことを、他の人に思い起こさせてはいけないのだ。

 

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自分のことは自分でやらないと道は拓けない

ある時、三郎さんは親切な霊魂にこう言われたことがありました。

 

私は暇ではないんです。貴方のように何もすることがなくて、退屈を苦痛に思っているような人とは違うんです。これでも忙しいんです。貴方一人に構ってはいられないんです。

水波一郎著 「死後の世界で恋をしてーー愛って?」 P.66-67 (下線は引用者)

 

自分は暇を持て余しているのに、親切な霊魂は多忙を極めています。
この違いは何なのでしょうか。
上の世界には会社みたいなものがあって仕事がたくさんあるのでしょうか。三郎さんには想像もできないのでした。

三郎さんに親切にしている霊魂は、彼が物質の世界にいた頃から彼を担当していた霊魂です。本来であれば、物質界の人間を担当するのは守護霊と呼ばれる霊魂なのですが、現代ではこのクラスの霊魂と地上の人間とは霊的な距離が離れすぎてしまって、直接何かをすることが困難になっています。そこで守護霊と人間の間を繋ぐ役割を担う霊魂が登場しました。この立場の霊魂のことを水波霊魂学では「補助の霊魂」と呼んでいます。

親切な霊魂は、三郎さんの守護霊に依頼されて実際に活動していますので多忙だったのですが、三郎さんが他界した後は、基本的にほかの人の守護霊から依頼されてそちらの仕事をすることになり、三郎さんに付きっきりになるわけにはいかないのでした。

したがいまして、他界後暫くは何かと混乱することもあるかもしれないのでピンポイントの支援はしてもらえますが、こちらに慣れてしまえば、自分のことは自分でやることが原則となります。何か壁があってそれをどうにかしたい時でも、他人に頼る前に自分で乗り切る努力が必要だということです。

自分のことは自分で何とかすることができませんと、苦悩はいつまで経ってもなくなりませんし、霊的な成長も望めません。そうなれば、同じ場所で何十年も何百年も悩み続けることになります。

三郎さんは悩みながらも、何とかしたいと願いました。じつはそれが霊的な成長に繋がっていたのです。荒行などしなくてもただこの場所で普通に生活する中で悩んでそれを乗り越えようと努力することがこちらの世界の修行なのかもしれません。彼はこの場所を離れるときが来ました。前回は親切な霊魂が案内してくれましたが今回は違いました。どうした訳か、気が付いたら別の場所に移転していたのでした。

 

 
【死後の世界についての記事一覧】

第1回 水波霊魂学での見解と死後の世界を知ることの意義
第2回 この世との連続性」と「捨て去るもの」
第3回 最初の関門を突破できるか
第4回 上の世界と下の世界とは何か
第5回 誰もが「夢の中の世界」を経験する
第6回 イメージ したことが実現する世界
第7回 ケンカをすると地獄になる場所
第8回 呼び覚ましてはいけない記憶
第9回 「生きがい」 が見い出せないという苦悩
第10回 霊的に成長 するのか、停滞するのか、それとも後退か
第11回 自分勝手な願い を叶えてくれる神などいない
第12回 相手との 不一致 が悲劇を招く
第13回 なぜ 下の世界 に落ちるのか
第14回 「 宗教の教え 」に隠された本質とは
第15回 思い込み がもたらす不幸
第16回 『 囚われ 』-肉体が消えたあとに残るもの
第17回 無信仰 の人達が集まる街