死後の世界 (7)ケンカをすると地獄になる場所

angry man

 

私たちがふつう死後の世界と呼ぶ世界のことを、水波霊魂学では幽質の世界と呼んでいます。ここは物質の世界とはまったく違う法則で成り立っている世界でした。この世界にすっかり慣れてしまった三郎さんは恋愛を経験します。それも複数の女性を好きになってしまいトラブルになってしまったのでした。
ここで三郎さんは死後の世界のケンカの恐ろしさを初めて知るのでした。
なお、 死後の世界 の見解については水波霊魂学に基づいており、水波先生の著書「死後の世界で恋をして–愛って?」で主人公が経験したことを参考にしています。

 

遮るものがないということ

死後の世界でのケンカがなぜ恐ろしいのかについて、私たちはある程度想像することはできます。

そこで、この世のケンカを考えてみましょう。
この世のケンカはいくら激しくてもじつは制限だらけなのです。殴られている方は痛いのは当然なのですが、殴っている方も素手なら痛いです。肉体は激しく運動すると疲れて動けなくなりますので、殴っている方が疲れますとケンカは終わります。何時間も殴り合うことは困難です。
このほかにも、肉体は腹が減りますし寝ないといけません。飲まず食わずで何日もぶっ続けでケンカはできません。
さらには、現代人は忙しいので、何時間もケンカし続けるほど暇ではありません。会社で誰かと口論になっても10分後に会議の予定があれば会議に間に合うように強制的に終了です。

一方、死後の世界のケンカはどうでしょうか。
死後の世界では肉体ではなく幽体という霊的身体を使用します。幽体は肉体ではありませんので食べる必要も寝る必要もありません。おまけに疲れることもありません。
会社もありませんし、欲しいものがあれば念じれば出現しますのでお金を稼ぐ必要もありません。時間は有り余るほどあるのです。

つまり、死後の世界でのケンカは攻撃するほうが飽きるまで延々と続くということです。

 

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死後の世界でのケンカはまるで 地獄

ある日、三郎さんと4人の女性が一堂に会していました。三郎さんはとても気まずい気分でした。4人の女性は顔では笑っていましたが心の中は誰一人笑っていませんでした。
ここで4人の女性の「話し合い」が始まります。

 

物質の世界であれば、食事の時間になったり、夜が更けたりする。しかし、霊魂の世界はそれがない。遮るものは何もなく。議論は延々と続くのである。物質の世界ならば、いずれ疲れてしまう。ところが、霊魂の身体はその気になれば、いつまで経っても疲れないのであった。
いったい、何時間、話したであろうか。もしかしたら、何日なのであろうか。三郎はだんだん、霊魂の世界が嫌になってきていた。

水波一郎著 「死後の世界で恋をしてーー愛って?」 P.40

 

霊魂の世界(幽質の世界)には夜がありません。太陽があるのかないのか知りませんが常に昼間のように明るいのです。時間の概念がこの世とは随分違うようで、今日が何月何日がも分かりませんし何時何分なのかも分かりません。この世界は時間で縛られることがないので三郎さんのようにここに来て日が浅い人はとても気になるかもしれませんが、長年生活している人にとっては時間の概念といった必要のないものはどんどん失われていくのでしょう。

女性たちの議論は延々と続きましたが、一旦解散しました。これは物質の世界の癖がまだ残っている三郎さんに配慮したものだったようで、本当ならケリがつくまで続いていました。

そして、時間をおいて第二回目の話し合いが始まりました。4人の女性とも今回でケリをつけるという雰囲気が漂っていて、三郎さんはただ怯えるばかりでした。誰も引き下がる気配のない議論が1時間ばかり続いたころに惨劇が起こりました。

 

その時であった。エリの体が後ろにのけ反った。驚いたのは、エリも同じであった。今度はエリが切れた。やはり、何か叫んだかと思うと、マリを睨むのであった。そうすると、今度はマリがのけ反った。

三郎は始めて見た。これが霊魂の世界における喧嘩だったのである。霊魂の世界は腕力の世界ではない。そうではなく、念の世界であった。念が強い方が勝つ、それが霊魂の世界の喧嘩だったのである。

同 P.43

 

霊魂の世界のケンカは、腕力の強さではなく念の強さで決まります。死後の世界(幽質の世界)は物質ではなく幽質と呼ばれるもので成り立っている世界です。幽質は「思い」によって、つまり念じれば実現する世界です。この思いのことを「念」と呼んでいます。しかも、念じる強さによって実現できるが否かが決まる世界でもあります。

例えば、家が欲しいと念じて目の前に家が出現したとしても、自分より念が強い人が「消えろ」と念じれば、自分が作った家が消えてしまいます。ケンカも同様で相手に向けて攻撃的な思い(念)が強い方が、相手を吹き飛ばしたり、相手の幽体が傷つけたりすることができます。念が強ければ相手の幽体をどんどん傷つけることができます。

さらに、なぜなのかは知りませんが、幽体が傷つくと「痛い」と感じるようで、念で傷つけられると痛いわけです。しかし、幽体は肉体ではありませんのでいくら痛めつけられても死ぬことがありません。死なないことがお互いに分かっているので、加減など考える必要がありません。

いったん、喧嘩が始まって、念の飛ばし合いになれば強い方は徹底的に相手を痛めつけることになります。あちらには警察はありませんし、周囲の人もケンカに巻き込まれると自分が痛い思いをしますので無関心です。負けたほうは地獄の苦しみを味わいます。

幸いにして、今回のケンカが終わったとしても、どちらかに遺恨が残った場合は、次に出会った時には再びケンカになりますし、負けたほうが助っ人を呼んでくれば乱闘になりますが、警察はいません。まさに地獄といった光景が出現するのです。

 

三郎さん、逃げる

この世界のケンカの恐ろしさを知った三郎さんは、あてもなく逃げ出しました。幸いにして女性は誰も追いかけて来ませんでした。ここでも三郎さんはラッキーでした。なぜなら、幽体はいくら走っても疲れませんので、仮に女性が追いかけてきたとすれば三郎さんも女性も全く疲れないまま、追いかけるほうが諦めるか、追いつかれて捕まるまで延々と逃げ続けなければならないところでした。三郎さんが逃げ出したことに怒った4人の女性に追いかけられて捕まってしまったら、三郎さんは4人の女性から念を浴びせられて、八つ裂きにされていたかもしれません。

とにかく、女性から逃れることができた三郎さんは、初めに助けてくれた霊魂と接触することに成功して、別の場所に逃れることができました。

新しい場所にも町があり、家が建っていました。そして、この場所には犬や猫といった動物も居ました。さらには、なぜか警察官のような恰好をした人までいました。

助けてくれた霊魂は三郎さんにこう言いました。

 

これからは、貴方も修行するのです。修行といっても荒行ではありません。ここでの修行は普通に生活するだけです。学習といった方が適切かもしれません。私はまた貴方と会えなくなります。今度会った時、学習の成果が出ていることを願っています。

同 P.48

 

三郎さんは新しい場所で生活を始めました。ただ、少し不安でした。

なぜなら、ここには警察官のような人がいるからです。勝手なことをすると逮捕されるかもしれません。とりあえず三郎さんは警察官に挨拶をしておこうと交番のような場所に向かいました。

交番で警察官に挨拶しようとした三郎さんはなぜか逮捕され、牢屋のような場所に入れられてしまいました。三郎さんは丁寧に逮捕の理由を尋ねました。警察官の返事はこうでした。

 

「お前は顔が悪い。ここでは悪い顔の者は逮捕される。」

「お前は最悪の顔をしている。まるで物質の世界のアイドルのようだ。」

同 P.51

 

物質の世界のアイドルのような顔をしているとなぜ逮捕されるのか、三郎さんが混乱していると一人の女性が交番にやってきました。そして三郎さんを見るなり、「随分と悪い顔ですね、こんな人は裁判して釜茹でにするべきです。」と言います。

三郎さんは混乱と恐怖で気が狂わんばかりでしたが、この女性に尋ねました。

 

「すみません。僕は貴方のおっしゃる事の意味が全く分からないんです。どうして、僕が釜茹でにされなければいけないんですか?どうか教えてください。僕はまだ霊魂の世界に来てから日が浅いんです。その上、ここの地域には着いたばかりなんです。だから、まるで分からないんです。どうか教えてください。」

同 P.52

 

 
【死後の世界についての記事一覧】

第1回 水波霊魂学での見解と死後の世界を知ることの意義
第2回 この世との連続性」と「捨て去るもの」
第3回 最初の関門を突破できるか
第4回 上の世界と下の世界とは何か
第5回 誰もが「夢の中の世界」を経験する
第6回 イメージ したことが実現する世界
第7回 ケンカをすると地獄になる場所
第8回 呼び覚ましてはいけない記憶
第9回 「生きがい」 が見い出せないという苦悩
第10回 霊的に成長 するのか、停滞するのか、それとも後退か
第11回 自分勝手な願い を叶えてくれる神などいない
第12回 相手との 不一致 が悲劇を招く
第13回 なぜ 下の世界 に落ちるのか
第14回 「 宗教の教え 」に隠された本質とは
第15回 思い込み がもたらす不幸
第16回 『 囚われ 』-肉体が消えたあとに残るもの
第17回 無信仰 の人達が集まる街