死後の世界 (12) 相手との 不一致 が悲劇を招く
地上の世界に戻った三郎さんは、婚約者に良かれと思ってあれこれ行動しましたが、それは結果的に婚約者だけではなく三郎さんをも不幸にすることだったのです。再び死後の世界に連れ戻された三郎さんは初めての場所に来ていたのでした。
なおここでの 死後の世界 の見解については水波霊魂学に基づいており、水波先生の著書「死後の世界で恋をして–愛って?」で主人公が経験したことを参考にしています。
相手との 不一致 はトラブルのもと
「ここはとってもいい世界ですよ。何しろ、神様を信じなくて良い世界ですから。」
三郎は一瞬、ヒヤリとした。親切な霊魂の話が正しければ、人間は神霊の方向に向かって生きる事が正しい。そうなると、この地域は元の世界よりも低い可能性がある、と思えたからである。
水波一郎著 「死後の世界で恋をしてーー愛って?」 P.115 (下線は引用者)
初めて来た地域で最初に話しかけた人は、この地域は神を信じなくても良いところだと言いました。そして、ここには神を含めたすべての束縛を嫌い、自由を求める人たちがたくさん住んでいると教えてくれました。
もしも、この地域の全員が同じ考え、同じ価値観を永遠に共有しているのならば、下の世界であっても平和に暮らせるかもしれません。しかし、死後の世界に住んでいる人間は肉体はありませんが心はそのまま残っています。何かきっかけがあれば考え方も変わるかもしれません。
そうなりますと、必ず対立が起こります。対立が起こると他に何もすることがないので議論が永遠と続くことになり、それで誰か一人でも気持ちがキレてしまったら最後、念による攻撃が始まってしまいます。
下の世界がなぜ辛い場所であるのかを示す一つの例は、個人の欲望が抑えきれなくなると争いが起こって、最終的に念による殺し合いが始まることです。殺し合いといっても、幽体は死ぬことはありませんので、殺してやりたいと思うくらいの激しい憎悪の念でお互いに傷つけあいます。この勝負はどちらかが一方的にやられることが多いのですが、やられた側になった場合は悲惨極まりないことになってしまいます。
これは、愛で結ばれているはずの男女であっても同様なのです。同じ方向を向いているうちは良いのですが、相手が自分の求めることと違うことを求めた時、悲劇は起こります。
死後の世界で仲の良い夫婦が成立しにくいわけ
物質の世界を生きる私たちは、誰一人の例外もなく、自分を中心にして生きています。しかし、あまりに利己的な態度では周囲から嫌われてしまいますので、「愛」というものを意識し、それを理想化していきます。
しかし、それは上の世界の霊魂から見ますと、あまりにも未熟で、あまりにも不完全であり、理想からは程遠いものなのです。
この世で男と女が恋愛をするとき、相手のどこに惹かれるのでしょう。もちろん人によって違いますが、容姿だったり財産だったり、心理的な安らぎなのかもしれません。しかし、それはあくまでも個人の好みであって、愛というものの本質とは関係がありません。
死後の世界の特徴でも触れました通り、あちらの世界では容姿などいくらでも変えられますし、欲しいものは何でも出現しますので収入や財産といったものに惹かれる理由がありません。
愛という気持ちは、相手をいとしく思ったり、慈しんだり、敬意を払ったり、いたわったりして、相手の幸せを願う心情です。しかし、いくら大恋愛を経て結婚した夫婦であっても、お互いの価値観や叶えたい夢や欲求が完全に一致することはありません。片方の意向を優先するということはもう片方は犠牲になるということです。
かといって、自分を犠牲にして相手の成功を願ったとしても、相手がそんなことを望んでいなければ結局は空回りになりますし、逆に自分の成功が家族の幸福だと思っていたとしても、家族は自分の事ばかり優先する自分勝手な人だと思っているかもしれません。
相手の心の中など誰にも分からないのですから、人は誰でも自分の目線でしか物事を判断できません。そうなりますと、必ず不一致が生まれます。
この世では、相手の心の中で「この人には愛想が尽きた。もう別れたい。」と思っていたとしても、それを口に出したり行動しなければ相手に伝わらないことであっても、死後の世界ではそれが相手にそのまま伝わってしまう事があります。
「自分のことばっかり考えて、私のことはほったらかし。マジでうざい!」と心に思ったことが、相手にそのまま伝わりますと、大抵の場合はケンカになります。
「可愛さ余って憎さ百倍、という言葉がありますからね。物質の世界では、武器がないとなかなか人は殺せません。それに殺したら逮捕が待っています。どんなに怒っても、傷ついても、我慢するしかないんです。
ですが、こっちは違いますからねー。
何をしても、逮捕もされないし、強い者が勝つ。いくら切り刻んでも相手は死なないから、殺人にもならない。その上、武器は念ですから、誰でも心が切れた時が殺し合う時になるんです。夫婦喧嘩イコール殺し合い、みたいなものですから。やはり、物質の世界は良かったですよ。同 P.121 (下線は引用者)
いくら相手を愛している人であっても、相手が自分が思う方向と違う道を選択しようとした時、それを許すことができなければ、この世では価値観の違いや考え方の違いといったことで離婚すればいいのかもしれませんが、死後の世界にはそもそも結婚制度がないのでそれもできません。
怒りの感情が大きくなってそれが爆発した時、止めてくれる人も物もありません。警察もないですし、他人のいざこざを仲裁してくれるお人好しもいません。
恋愛感情だけで夫婦になれるほど、死後の世界は簡単な場所ではないということなのでしょう。そして、この世での「愛」という未熟で不完全なものを死後の世界にそのまま持ち込んでしまった悲劇でもあります。
【死後の世界についての記事一覧】
第1回 水波霊魂学での見解と死後の世界を知ることの意義
第2回 この世との連続性」と「捨て去るもの」
第3回 最初の関門を突破できるか
第4回 上の世界と下の世界とは何か
第5回 誰もが「夢の中の世界」を経験する
第6回 イメージ したことが実現する世界
第7回 ケンカをすると地獄になる場所
第8回 呼び覚ましてはいけない記憶
第9回 「生きがい」 が見い出せないという苦悩
第10回 霊的に成長 するのか、停滞するのか、それとも後退か
第11回 自分勝手な願い を叶えてくれる神などいない
第12回 相手との 不一致 が悲劇を招く
第13回 なぜ 下の世界 に落ちるのか
第14回 「 宗教の教え 」に隠された本質とは
第15回 思い込み がもたらす不幸
第16回 『 囚われ 』-肉体が消えたあとに残るもの
第17回 無信仰 の人達が集まる街