『愛の力』を過信する人はなぜ失敗するのか

孤立

 

人間関係は利害で動く

私たちは、自己の欲望を実現するために日々努力しています。そして、同じ欲望を満たしたい人が集まりますと、組織や集団が出来上がります。

しかし、同じ目標を目指している組織や集団であっても、人それぞれに好みや物事の優先順位が異なりますので、利害関係というものも同時に発生します。

利益をもたらしてくれる人とは親密になろうしますが、損害を被る可能性があったり自分の利益にならない人とははっきりと敵対するか距離を置くかもしくは無視します。

これは当たり前といえば当たり前のことなのですが、こういう集団の中に愛の力を過信して失敗する人がたまにおられます。

 

会社であれ、学校であれ、ご近所との関係であれ、人間関係は利害で動いています。

派閥とまではいかないまでも、共通の利害で集まっているグループが複数あったときに、『愛の力』だけで世渡りしようとするのははっきり言って無謀です。

『愛の力』を信じている人は、誰にでも笑顔で平等に接すれば、やがてみんなと親しくなれると思っているのかもしれませんが、現実は逆の結果になることも多いです。

 

 

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愛の力を過信して孤立したCさん

仮に、ある組織にAさんを頂点にするグループとBさんを頂点とするグループがあったとして、AさんとBさんはライバル関係だとします。

そこにどちらのグループにも属さないCさんがいました。Cさんは両方のグループの人に平等に接していたとします。

 

これを両方のグループの人たちがどう感じるのかが問題です。

「Cさんはうちのグループの人ではないから味方ではない。しかし相手のグループにも属していないようだ。何やら得体のしれない人だ」

両方のグループに得体のしれない人だと思われたCさんは最悪の場合、両方のグループから排斥されることになり、孤立します。

Cさんの『愛の力』は通じませんでした。

 

それはなぜなのかと言いますと、Cさんは「人は欲望の実現のために動いている」という大前提を軽視したからです。

大人は子供のように己の欲望を露わにすることは少ないかもしれませんが、心の奥には何かしらの欲望が必ず存在します。

AさんやBさんのもとに人が集まっているのは、彼らが『愛の人』ではなく自分の欲望を実現させてくれるかもしれない人だからです。

これをCさんは理解できなかったから孤立してしまったのです。

それではCさんはどうすれば孤立せずに済んだのでしょうか。

 

 

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愛の力を過信して孤立したCさん

Cさんに足りなかったもの、それは『現状の認識と分析』でした。

 

Cさんがまず最初にやるべきだったのは、組織の人間関係を知ることでした。そうすればAさんとBさんがライバル関係にあり、それぞれを支援するグループの存在も分かったのでした。

 

そして、それぞれのグループに誰が属しているのかを知った上で、自分の周りにいる人たちはどちらに属しているのかを調べます。もしも両方のグループに属していない人がいるのなら、その人はどのように立ち回っているのかをよく観察します。

 

その人の状況や振る舞いを見て、いずれのグループにも属さないで生きていけるのであれば属さない選択もあります。

しかし、どちらかのグループに属さないとまずいというのであれば、どちらのグループに属すのが良いのか、その場合に相手のグループとはどのように付き合うのか、それを冷静に考えるべきだったのです。

 

自分の進むべき道は、自分の置かれた立場と周囲の環境をよく分析した上で慎重に進みませんと、臨機応変な対応ができずに行き当たりばったりな対応に終始する恐れがあります。

 

それが結果的に自分の生き辛さに繋がっていってしまいます。

『愛の力』を表現したいのであれば、事前にこれだけの対策を打った後に行なうべきでした。

 

「愛」があれば何でも叶うとか、他人が寄ってくるなどという主張を鵜呑みにして、自身の置かれた環境を軽視すると、思わぬ困難に遭遇する恐れがあります。

まずは、自分を知ること、それは自分の心を知ることをまず第一にして、周囲の環境を冷静に分析できるようになることが大切です。