カルマ ~過去世の轍を踏むということ
カルマはいつやって来るのか?
前回の記事でカルマは幽体が経験した過去世の集積であると書きました。今回の人生で使用している肉体の脳は過去世なんて知りませんし霊魂も知らないのに、何かの拍子で心の奥に沈んでいた「ある心情」が蘇って表面の心に影響を与えますと言われても何のことやらさっぱり分からないというのが正直なところだと思います。
さっぱり分からないのはある意味当たり前のことですので、それを前提にして話を進めていきますが、仮にカルマなるものが存在するとしてそれが何のタイミングで浮かんでくるのか疑問に思われると思います。
結論を言えば「人それぞれ」なのですが、それでは身も蓋もありませんのでいささか一般論になりますが、原因となるものを2つほど挙げてみたいと思います。
ストレッサー
ストレッサーとは簡単に言えば、私たちにストレスを与える何らかの刺激のことです。
例えば、大嫌いな人物を発見した時に身構えたりイライラした感情が湧いてきたり、その場を去ったとしたら、大嫌いな人物がストレッサーで、思わず身構えたりその人との接触を避けようと行動することがストレス反応です。
ストレッサーは私達に影響を与えるあらゆる刺激のことを言いますので、人間関係や自身の病気といった分かりやすいものばかりではなく、暑いとか寒いとか雨が降っているとか、テレビや映画で観た場面、満員電車、騒音などもストレッサーです。
天気の善し悪しや気候などは今も昔もあまり変わらないでしょうが、人間関係や得られる情報量は格段に違っています。100年前に満員電車は存在しませんし、テレビや映画が庶民に広く受け入れられたのは20世紀です。インターネットはほんの2~30年前です。
カルマは今回の人生で経験したり見たり聞いたりしたことがきっかけで浮いてくることが多いので、外部からの刺激が多すぎる現代人はとてもカルマが浮きやすい環境に生きていると言えると思います。どんなストレッサーもカルマを浮かせるきっかけになる可能性がありますが、肉体の脳は当然ながら何も分かっていません。
人生の転機
学校に入学したり、会社に就職したり、結婚したり離婚したり、引っ越ししたりといった人生の大きなイベントを経験した時はカルマが浮きやすい時期であると思われます。
また、ギャンブルで大金を手にしたり、大病をしたり、大切な人を失くしたりした場合も同様です。
こういう時期は表面の心が大きく動きますし、周囲の環境も大きく変わることが多いということもありますが、これらのイベントは過去の人生でも経験していることが多いわけです。仮に結婚したために辛い思いをした過去世がある場合、今回の人生で結婚した時に過去の心情が蘇ってくることがあります。この心情は結婚を後悔している心情ですから、これが表面の心に大きな影響を及ぼしますと今回の結婚生活に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また、特に女性の場合は出産も気をつけなければいけない時期といえるでしょう。
過去の轍を踏まないために
カルマが表面の心に影響を与えて何が困るのかと言えば、過去の轍を踏んでしまうということです。
ある経験をしたことで辛い思いをしたり、命を失ったり、深く後悔したり、孤独を味わったりしているのですから、今回の人生で同じ経験をしたり、それと似た状況になった場合は肉体は何も分からなくても幽体は思い出してしまうのです。そしてその状況を回避しようと必死になります。肉体で言えばストレス反応のようなものが起こっているのかもしれません。
先程の例でいえば、肉体の脳は愛する人と結婚するための準備を喜んで行っていますが、心の奥では結婚したことで経験した辛く悲しい心情をどんどん大きくなっています。そして結婚という行為を避けようと必死になっています。この心情が表面の心に影響を及ぼし始めますと、パートナーのちょっとした言葉や行為にイライラし始めるかもしれません。それが嫌悪感を引き起こし最終的には離婚するかもしれません。
しかし、幽体の心情(カルマ)は何も満足していません。何も知らない肉体の心はしばらくして別の人と恋に落ちますが、幽体はまた同じ反応を起こすだけです。そして年月が経って表面の心は思います。
「恋人の時はうまくいくのだけれど、結婚したり結婚を考えたりするとなぜだか知らないけれど気持ちが醒めてしまう。」
本人は自他共に求める恋多き人と思っているのかもしれませんが、それはもしかしたらカルマが原因かもしれません。
そして、これがカルマが原因であれば、このカルマが強い影響を及ぼす限り、同じことを何度も繰り返すことになります。
カルマの例
最後にカルマが今回の人生にどのような影響を与えたか、私自身のある過去世をご覧頂きたいと思います。
過去世の概要
私は鎌倉幕府が成立した頃に現在の神奈川県のあたりに、ある家の三男として生まれました。その後東京都のあたりに引っ越してそこで育ちました。
私は小さい頃から独立心が旺盛で成人した頃には既に実家を離れて暮らしていました。その後結婚しましたが実家とはかなり離れていたこともあり妻の実家との付き合いが多かったようです。
ある時、誤って弓が刺さるという大けがをしてしまい、それがもとで生活に困窮するようになりました。
この時、私の独立心が邪魔をしたのか自分の実家にも妻の実家にも頼るのを嫌って、自分の力だけでお金になる仕事を手掛けようとしました。
しかし結果的には失敗に終わってしまい、家族もいましたのでもう一旗あげようと無理をして鎌倉に向かうことにしました。大きな町に出ればなんとかなると思っていました。
ところが旅の途中で妻が病気を患い、さらに小さい子供もいましたので誰も知り合いのいない土地での生活が成り立たなくなり、川へ身投げする寸前まで追い詰められました。それでも何とかある寺に雇ってもらえることになり私たちは家族で住み込んで働きました。
それからは妻の病気も快方に向かい生活も少しずつ安定していきました。そして中年の頃になると仕事も安定して家を持てるくらいになっていました。
そんなある時、一人息子が誰かと争いになり、弓を射られたようで数日後に他界してしまうという出来事が起こってしまいました。
まさに青天の霹靂でした。
一人息子を亡くした私たち夫婦は人生に絶望してしまい生きる気力も失せた状態が続きました。
いつしか私はあの世にいる一人息子はどうしているのだろうという気持ちが強くなっていました。老年期に入った頃になりますと盛んに霊媒師に見てもらいましたがどうしても自分の納得できる答えを得ることができませんでした。
とうとう私は決意しました。「自分で確かめるしかない」と。
そして私は自ら命を絶ったのです。
過去の人生で残った心情と今回の人生に与える影響
この人生での最初の挫折は自身の大けがでした。これで人生が大きく狂ってしまいました。老年に至るまでこのことを気に病んでいたようで運が悪いとか悔しいという強い心情があったそうです。また一家で身投げする寸前まで心理的に追い詰められたり、一人息子の死とその後の絶望など苦悩の多い人生でした。
この心理が強い時に、今回の人生で何かしら人生の壁に当たるようなことがあると、苦悩が倍加して感じられたり、自殺願望が起きる可能性があります。また運が悪かったという心情もあるのでちょっとした失敗でも深く落ち込んでしまうような心理状態に陥りやすいとの指摘がありました。
当時の状況について
この過去世は2002年に私が契山館の会員になって初めて調査をして頂いたときのものです。つまりいくつもある過去世のうち、当時、一番影響を強めていた過去世です。この時の私を振り返りますと、一番印象深いのは運が悪いという心情です。何かあるたびに運が悪いという気持ちが湧いていたことを今でもよく覚えています。極端に言えばじゃんけんに負けた程度のことでもこの心情が湧いてくるのです。会社の同僚と話をしても「私は運が悪いから」と言った発言もしていました。
もし、これらの心情を放置したまま神伝の法も知らずに2002年から今までの人生をそのまま送っていたとしたら、かなりまずい状況になったと思います。おそらく最悪の結末を迎えていたであろうということははっきり自覚できています。自分自身の心の内を文章で表現しきれないのはとても歯がゆい思いです。
まだ安心するのは早いのですが、私はこの過去世に引きずられずに済みました。めでたし、めでたし。となればいいのですが現実はそんなに甘くはなかったです。
なぜなら、人は何回もこの世に再生していますので過去世も複数あります。当然、それぞれの人生でさまざまな心情が蓄積しています。一つ解消できたからといって安心できないのです。
今回の記事は、自分の過去世に自分が苦しめられる場合について書きましたが、カルマは誰でも持っていますので、学校や会社、近所付き合いといった不特定多数の人と関わることで他人のカルマに苦しめられる可能性もあります。
次回はこのあたりのことについて書いていきたいと思います。
(続く)