company (カンパニー)に必要なのは『絆』

company

 

 

バンド・オブ・ブラザーズ

 

バンド・オブ・ブラザース (Band of Brothers)は、2001年にアメリカで制作されたテレビドラマです。

 

第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍第101空挺師団第506歩兵連隊第2大隊E中隊の出征前の訓練(1942年)からナチスドイツとの戦闘と勝利そして終戦(1945年)までの3年間が実話をもとに描かれています。

 

製作費に1億2000万ドルを注ぎスティーヴン・スピルバーグ、トム・ハンクスといった超豪華な面々が制作に携わっています。全10話で全体で10時間くらいの作品ですがそのクオリティはテレビドラマの域を超えています。

 

この作品の特徴は、戦闘シーンのリアルさもありますが戦争という極限状況における人間模様を精緻に描いていることです。そういう意味で、私はこれを凌ぐ戦争を扱った映画やドラマを知りません。

 

ちなみに「バンド・オブ・ブラザーズ」という文言は、シエイクスピアの「ヘンリー5世(The Life of Henry the Fifth)」に出てくる聖クリスピンの祭日の演説の一節、

 

We few, we happy few, we band of brothers:
For he to-day that sheds his blood with me shall be my brother;

(我々は少数であっても、我々は幸せな少数であり、「兄弟の一団」である。なぜならば、今日共に血を流すものは、私の兄弟となるからである。)

 

から引用されたそうです。

 

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Company =歩兵中隊=会社

 

さて、この作品の中でE中隊は「イージー・カンパニー(Easy Company)」と呼ばれています。これは聞き間違いを防ぐためのフォネティックコード(通話表)でEをEasyとしていたからで、companyは陸軍の歩兵中隊という意味ですので、E中隊はEasy companyとなります。

 

そもそも中隊のことをなぜcompanyというのかといいますと、その語源がラテン語で共に(com)パンを食べる(panis)仲間であり、中隊とはまさしく服務(職務や任務につくこと)や戦闘についての基本単位だからです。

 

近代陸軍での戦闘単位を中隊から上に見ていけば、時代や国によって若干の違いはありますが、

中隊(60~250名)→大隊(300~1,000名)→連隊(500~5,000名)→旅団(2,000~5,000名)→師団(10,000~20,000名)→軍団(30,000名~)→軍(50,000名~)→総軍となっていきます。

 

しかし、仮に一個師団がある一つの作戦を行う場合であっても各戦場の配置は中隊が基本単位です。中隊の横には別の中隊が配置されますが、戦闘で仮に自分の中隊が崩れてしまったら横の中隊も崩れてしまい、そうなりますと師団全体が崩れてしまいます。

 

したがいまして軍隊における中隊というのは、戦闘行為を行なうのと同時に「仲間」として強い絆が要求される組織であるといえるでしょう。

 

私たちは現在、規模・内容にかかわらず「会社」を表わす最も一般的な単語としてcompanyという言葉使っています(他にコーポレーション(corporation)という言葉もありますが、これは主に法人企業を指します)。

 

誠に残念なことに昨今はcompanyから「仲間」という要素が無くなってしまった会社というものが存在するようになってしまいました。いわゆるブラック企業などはその代表格であり、そのような冠を戴いていない会社であっても職場に部下を次々にうつに追い込む上司がいたりします。

 

会社は営利を目的をする組織には違いありませんが、ある目的に向かって協同する組織である以上、効率だけを追求して仲間意識を排除した会社に果たして未来があるのか疑問に思ってしまいます。

 

軍隊における中隊を会社に置き換えればおそらく課に当たると思われますが、隣の課が何をしているのか分からないだけではなく、同じ課であっても部下や隣の同僚がどんな人で何に困っているのかも分からない。

 

仕事以外のコミュニケーションを一切とらない職場であれば起こって当然の事態です。これが会社単位に拡大すればある部署が不祥事を隠ぺいすることなど簡単にできますし、「仲間」という意味が消えた『company』ならば同僚が理不尽な目に遭って退職することになっても自分に弾が当たったわけではないと知らんぷりできるのでしょう。

 

companyという語が、軍隊の「中隊」という意味と「会社」という意味、そして「仲間」という意味をもっているのだと知る時、戦争をする必要は決してありませんが「会社組織として望まれる姿」というものがおぼろげに浮かんでくるように感じています。