アダムとエバ は追放されたのではない
不自由への憧れという不思議な感情
人間には習性と呼べるほどのことかどうかは別にして、現在の境遇と正反対のものを求めるという側面があるようです。
例えば、何でも手に入れることができるお金持ちが貧乏な生活をしてみたいと思ったり、王様が庶民の生活をしてみたいと思ったりするようなことです。
ただ、この逆のパターン、すなわち貧乏人がお金持ちに憧れたり、庶民が王様になりたいと思うのはそんなに不思議なことでもありませんし、困難な道かもしれませんが努力すれば何とかなるかもしれません(この国では王様になるのは不可能ですが)。
何不自由ない生活が保証されているのに、あえて不自由を望むのは奇異に見えますが、私たち人間は遥か昔にそれを行なっています。
それは創世記という古い書物に書かれている、いわゆる『失楽園』の話です。
21世紀を生きる私たちから見ればただのおとぎ話かもしれませんが、おとぎ話の中にも霊的なものの一端が示されているかもしれません。
いずれにしましても、私たちの心の奥には『あえて不自由を経験したい』という不思議な感情が隠れているかもしれません。
アダムとエバ
創世記によると、アダムは神が造られた最初の人間です。アダムはエデンの園で生活していました。そこにはいろいろな実をつける木があったそうで、中でも中央に生えている2本の木、命の木と善悪の知識の木(知恵の木)の実について、神は善悪の知識の木がつける実だけは食べてはいけないと言ったそうです。
その後、アダムの身体からエバが造られました。アダムは男、エバは女でしたので、この2人が最初の人類ということになります。
ある時、エバが蛇に唆されて善悪の知識の実を食べ、それをアダムにも勧め彼も食べてしまったことが神に露呈したことで2人はエデンの園を追い出されてしまいました。
これがいわゆる失楽園のお話なのですが、なかなか興味深いお話だと思います。なぜなら、このお話自体は事実ではないにせよ、霊的な一端を伺い知ることができるからです。
追放されたのではなく自らの意志で出て行った
水波霊魂学ではアダムとエバのお話について、教材にする機会はほとんどありませんし書籍化されているわけでもありませんので、公式の見解はありません。したがいまして、ここから先は私個人の見解となります。
エデンの園にいたアダムとエバは自由に暮らしていました。禁断の果実に手を出さなければ永遠に自由でいられたのです。しかし、彼らは自由過ぎる暮らしに飽きてしまいました。彼らはエデンの園から追放されたのではなく、自らの意志で楽園を出たいと思っていました。
しかし、楽園の外は未だ発展途上にあって、自分たちが暮らすための環境が整っていませんでした。ですから、アダムとエバは環境が整うまでじっと待っていました。
そして、ある時、やっと環境が整いました。アダムとエバは楽園の外に出る決断をして、自らの意志でここを飛び出していきました。
さて、エデンの園とはどこかといえば、それは水波霊魂学でいう『幽質の世界』です。これは以前にも書きましたが、至上の神が神霊を創造され、神霊が霊質の世界とそこに住む霊魂を造られ、霊質の霊魂が幽質の世界とそこに住む霊魂を造られました。
幽質界に住む霊魂とは、私たち人間のことです。さらに後になって人間とは異なりますが高い知性を持った特別な霊的な生命体が造られました。それが私たちが龍と呼んでいる生命体です。
人間の霊魂は幽質の世界に住んでいる霊魂です。ということは、アダムとエバは幽質の存在ということになります。つまり「霊魂」です。
幽質界に住んでいた2人は自由な世界に飽きてしまって、不自由な世界を体験したくなりました。そして、幽質界の中に物質の世界が造られ、長い長い歳月を経て幽質の世界の人間が入り込むに足る動物が現れました。それが現生人類です。この現生人類がさらに動物的な進化を遂げ、文明を興せるだけの能力を得た時、幽質界にいた人間の霊魂はさまざまな反対の声や警告を押し切って、地上の人類に入り込んでいきました。
もちろんこれは人間の霊魂の自由意志でした。
楽園を出た代償
ところが、地上の世界は彼らの想像を超える過酷な世界でした。肉体はいくら大切に扱ってもすぐに壊れてしまいます。肉体を維持するために食べなければいけませんが、そのためには労働をしなければいけませんでした。
かといって、いつまでも働いていては肉体は壊れてしまいます。毎日寝なければなりません。
集団で生活を送るようになると、貧富の差や人間関係に苦悩することになりました。
強い者が弱い者を支配し、強い者同士の戦いに駆り出されて殺したり殺されたりすることもありました。相手の心が分からないので信頼している人に裏切られて辛い思いをすることもありました。
さらに、数々の苦悩や激しい心情を抱えたまま他界して、幽質の世界でも地上の世界での苦悩をそのまま引きずってしまいました。その為に、幽質の世界でも対立や戦いが起こるようになりました。
その上、地上の男女が生殖行為をするたびに、幽質界にいる霊魂の一部が地上に再生することになり、時が経つとともに苦悩を抱える霊魂が幽質界に溢れていきました。
現在は、地上の世界も幽質の世界も、対立と戦いが絶えない所になりつつあります。それでも幽質の世界に限ればいわゆる「上層の場所」に行くことができればそれを回避することができますが、地上の世界は、科学を妄信する人が大勢を占めるようになり、神に祈るとか信仰心を持つ人、あるいは宗教活動をする人は、心が弱い人とか人生の敗者といったレッテルを貼られ、現世利益を追求する人や金儲けがうまい人が成功者という風潮がどんどん強まっています。
こうなりますと、他界後に上層の世界に入れる要素がありませんので、普通に生きて普通に死ねば普通に下層の世界に入る人達だらけになります。
後戻りはできないが・・・
人間の霊魂が、エデンの園(幽質の世界)を出たことは、今更どうにもできないことです。禁断の実を食べてしまった人間は『善悪』を知ってしまいました。
善悪とは、常に『私は善であなたは悪』と考えてしまうことですので、対立や戦争が起こるのは必然のことです。
おまけに、私たちはこれまでも何回も地上の世界に生まれては死ぬを繰り返しており、その一つ一つの人生で負った深い傷や苦悩を心の奥に溜め込んでいます。
これらの激しい心情は、今回の人生にも大きな影響を及ぼします。放置すれば必ず霊的な不幸が待っています。
地上の世界にいる間にしなければいけないことはたくさんあります。それは地上の世界を生きるための知恵だけではなく、他界後の人生を見据えたものでなければ何の意味もありません。
今回の人生で、大金持ちになったとしてもあの世にお金は持っていけないのです。本当の財産とは金銭ではなく、霊的生命体としても成長です。
この世で得たものが、『裸であることが恥ずかしいので服を着ること』だけでは、あまりにも悲しすぎます。